ドラゴンボールの最高な終わり方
日本を代表する、世界的な人気漫画の「ドラゴンボール」は、漫画に興味が無い人でもタイトルくらいは、どこかで耳にしたことがあるのではないだろうか。
原作者の鳥山明氏が描く「ドラゴンボール」は、平成7年に連載が終了している。
いま現在は、鳥山明氏が原案、作画は、とよたろう氏という形で、続編の「ドラゴンボール超」が連載中である。
個人的に「ドラゴンボール」は、「フリーザ編」で連載を終了していれば、半永久的に右に出る漫画は存在しないであろう、大傑作だったと思う。
以下、本記事でその理由を述べてみようと思う。
先ずは、「ドラゴンボール」のストーリーを知らない読者もいると思うので、少し長くなるが、概要を記しておこう。
漫画タイトルにもなっている「ドラゴンボール」とは、全部で7つあるオレンジ色の球のことで、世界中に散らばっている。球の中には、それぞれ1〜7個の星が入っていて、全てを揃えると「神龍」(シェンロン)が出現して、どんな願いも叶えてくれるという物である。
ボールからは特殊な電波が放たれており、ストーリー上では、それをキャッチするドラゴンレーダーを用いて、位置を特定するという形でボールが集められてゆく。
参考までに各ボールの名称を記載しておく。
星の数の順に、
一星球(イーシンチュウ)
二星球(リャンシンチュウ)
三星球(サンシンチュウ)
四星球(スーシンチュウ)
五星球(ウーシンチュウ)
六星球(リュウシンチュウ)
七星球(チーシンチュウ)
である。
ストーリーの初期においては、主人公の孫悟空が「ドラゴンボール」を集める途上で、他にボールを狙う敵とバトルになるという、アドベンチャーが主の漫画だった。
しかし、次第に敵とのバトル要素が前面に押し出される漫画へと変化し、「ドラゴンボール」自体は、申し訳程度の存在になった気がする。
面白いのは、戦った強敵達が次々と孫悟空の仲間になってゆくことである。
ヤムチャ・餃子(チャオズ)・天津飯・ピッコロなどの仲間キャラは、最初は敵として登場し、孫悟空またはクリリンと戦っている。
数々の強敵との死闘の後、世界征服を企むピッコロを、天下一武道会で撃破した段階で、この漫画には大きな謎が二つ残っていた。
一つ目は、孫悟空には尻尾が生えていて、満月を見ると大猿に変身して理性を失い、暴れだしてしまうが、悟空は一体、何物なのかということ。
もう一つは、ピッコロ大魔王は地球の神が修行の末に、自身の中から追い出した邪悪な心が実体化した存在であるが、見た目が明らかに地球人とは異なる神は、一体どこから来た存在なのかということである。
因みにピッコロは元々、神の一部だったので、どちらかが死亡すれば、もう片方も死亡するという運命共同体である。
この二つの伏線が一気に回収されて、疑問が氷解するのが「サイヤ人編」である。
ピッコロとの激闘から5年後のある日、一つの小型宇宙船が地球に降り立つ。
乗っていたのは孫悟空と同じく、尻尾が生えているラディッツという男だった。
ラディッツは悟空の前に姿を現し、
「カカロット。この星の有り様は何だ。人類を死滅させる事が貴様の使命だったはずだ」
と憤る。
何がなんだかわからない様子の悟空の姿を見て、記憶喪失だということを理解したラディッツは、
「教えてやる!まず貴様はこの星の人間ではない!!生まれは惑星ベジータ!!誇り高き全宇宙一の強戦士族サイヤ人だ!!!
そして、この俺は‥。貴様の兄、ラディッツだ!!」
と、驚くべきことを口にする。カカロットとは、孫悟空のサイヤ人名である。
さらに続けて、悟空は地球に住む邪魔な人間を絶滅させるために送り込まれた存在であり、サイヤ人は環境の良い星を探し、そこに住む者を絶滅させてから、適当な星を求めている異星人たちに高く売るのが仕事である旨を言い放つ。
ラディッツは、他の星を攻め落とす為に戦力として悟空を従わせようとし、息子の孫悟飯を人質に取って脅すが、悟空とピッコロのコンビによって倒された。
ラディッツは、一年後に自分より遥かに強いサイヤ人が二人、地球に襲来することを告げて息絶えた。また、悟空もこの戦いで命を落とした。
ここで一つ目の伏線が回収され、悟空の正体が明らかになった。初めて読んだ時、人と世界を救ってきた悟空が、人類絶滅を目的として地球に送り込まれたサイヤ人だったという展開には、大衝撃を受けた。
ピッコロは孫悟飯と、クリリン・ヤムチャ・天津飯・餃子は神の宮殿で、孫悟空は、あの世を通して向かった界王の元で、それぞれ修行して地球に襲来する二人のサイヤ人を迎え撃った。
悟空は、仲間が集めた「ドラゴンボール」の願いで生き返ることが叶い、参戦することができたのである。
地球に襲来したサイヤ人のナッパは、ピッコロを見て、
「あいつナメック星人だぜ」
と口にした。
ここで、二つ目の伏線回収である。神がナメック星人であることが判明したのである。
そしてもう一人のサイヤ人、ベジータが、ナメック星にも「ドラゴンボール」が存在するであろうことを示唆した。
ヤムチャはサイヤ人の手下のサイバイマンに、天津飯・餃子・ピッコロはナッパに殺された。ピッコロが死んだことによって地球の神も死に、神によって作られた「ドラゴンボール」も使用不能となった。
悟空はナッパを倒し、孫悟飯・クリリン・ヤジロベーの力を借りてベジータをも撤退させた。
サイヤ人によって殺された仲間を「ドラゴンボール」で生き返らせるために、孫悟飯・クリリン・ブルマは、地球の神の故郷であるナメック星へと向かい、悟空もサイヤ人戦で負った怪我の治療を終えて後を追った。
ナメック星には「ドラゴンボール」で不老不死を得るために、宇宙一の強さを誇るフリーザが、先に訪れていた。ここからが、「フリーザ編」の始まりである。
地球での戦いの傷を癒したベジータも、フリーザがナメック星に向かったことを知り、「ドラゴンボール」をフリーザより先に手に入れ、自身が不老不死を得んと、単身ナメック星に乗り込む。
ここに「ドラゴンボール」を巡って三つ巴の戦いとなる。
後にベジータは、フリーザを倒すために悟空達と共闘することになるが、フリーザに殺されてしまう。
フリーザは過去に、サイヤ人を自身の野望を満たす手駒として隷属させていたが、将来的にスーパーサイヤ人と呼ばれる天才戦士が現れて、自分の脅威になることを恐れた。そこで、サイヤ人が住む惑星ベジータという星を、圧倒的な力で消滅させてしまった。この時に、悟空の父のバーダックも殺された。
この事実をフリーザの部下、ドドリアから聞かされていたベジータは、息絶える前に涙ながらに、
と、悟空に頼み込む。
悟空とフリーザの決戦が開始されるが、圧倒的な強さに歯が立たず、クリリンが目の前で殺されてしまう。
怒りに打ち震える悟空の髪が金髪に変化して逆立ち、全身をオーラが包む。フリーザが恐れていたスーパーサイヤ人の誕生だった。
激戦の末、フリーザを打ち破った悟空は地球へと帰還する。
「サイヤ人編」で殺された仲間も、ナメック星の「ドラゴンボール」で無事に生き返った。
ここまでが「フリーザ編」終了までの大雑把な概要である。
これで、ずっと謎だった伏線は完全に回収された。そして悟空は、多くの星々を侵略・破壊して苦しめてきたフリーザを倒すことにより宇宙を救い、父のバーダックを始めとして、殺されたサイヤ人の仇を討ち、ベジータとの約束も果たし、宇宙一の力をも得た。
こうして見てみると、これ以上この後のストーリーとして、一体何を書けるというのだろうか。
しかし、連載は終了されずに続いた。この後の「ドラゴンボール」のストーリーは、僕にとっては完全に蛇足である。
次の「人造人間・セル編」は、悟空が子供の頃に戦って滅ぼした悪の組織・レッドリボン軍の科学者、ドクター・ゲロが、悟空への復讐のために製作した人造人間及び、ゲロ自身の手で生み出した究極の生物・セルとの戦いを描いたものだった。
突っ込みどころとしては、子供の頃の悟空と戦って勝てなかった地球の組織の科学者が、宇宙一と言われていた、フリーザの強さを超える存在を生み出したことである。セルに勝つべく悟空は、スーパーサイヤ人を超える強さを得るための修行に、悟飯と共に入る。もう、訳がわからない話である…
それでも、まだセルにはそれなりの存在感があったが、最後の「魔人ブウ編」に至っては、目も当てられない状態だった…
魔人ブウにボスとしての威厳は無く、まるでギャグ漫画のような技や描写さえある。
僕は「ドラゴンボール」ファンなので、連載終了まで読んだが、最後には呆れて悲しくなってしまった。
人類滅亡のために地球に送り込まれた悟空が、「ドラゴンボール」集めを通して成長しながら世界を救い、星々を侵略・破壊して恐怖に陥れていたフリーザをも倒して、宇宙に平和をもたらした。これで終われば最高ではないか。
鳥山明氏が作者なのだから、僕がどうこう言える問題ではないのだが、どうしてもこのような気持ちを抱いてしまう。
記事が長くなってしまったが、以上である。とても面白い漫画なので、まだ読んだことがない人には、とてもお勧めの作品である。
それではまた!
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