「マッカートニーIII」への思い

 久しぶりの記事投稿である。

 先日、ポール・マッカートニーが、12月にニューアルバムの「マッカートニーIII」をリリース予定である事を発表した。

 同名アルバムの3作目という事なので、当然「マッカートニー」「マッカートニーII」も存在する。

 先ず、シリーズ1作目の「マッカートニー」は、1970年に発表された。ビートルズが解散した年である。僕は後追いの世代だから、当時の空気を肌に感じる事はできないが、このアルバムに寄せられたビートルズファンの期待は、尋常ではなかっただろう。ビートルズとして、あり得ないと思えるほどのヒット曲を量産してきたポール・マッカートニーの、ファースト・ソロアルバムである。事実、このアルバムは全米アルバムチャートで1位を獲得している。

 しかし、インストゥルメンタル・ナンバーが多い上に、ポールが自宅に導入した録音機材を用いて、一人で全ての楽器を演奏してレコーディングしていて、「やっつけ仕事」との感が否めない。それでも、「Junk」や「Everynight」など、僕個人の感想としては、素材がとても良いと思う曲も有り、何よりも、「Maybe I'm Amazed」はビートルズ時代の傑作群と比較しても、全く遜色ない名曲である。よって、

 「もっと曲を書き溜めて、インストゥルメンタルの比率を下げ、丁寧に作り込んでいたら大傑作アルバムになったに違いない」

 との思いを抱く。

 

 次に、シリーズ第2段の「マッカートニーII」は、1980年にリリースされている。

 1980年は、ビートルズファンに取って、暗黒と呼べる年だった。1月16日には、ウイングス日本公演のために来日したポールが、成田空港において大麻不法所持で現行犯逮捕され、数日間の勾留の後、国外退去処分を受け、予定されていた公演は全て中止となってしまった。さらに12月8日には、ジョン・レノンが、彼の自宅付近で待ち構えていた男に、射殺されるという大事件が起きた。まさに暗黒の年である…

   そんな年にリリースされた「マッカートニーⅡ」は、これまた自宅スタジオで、全ての楽器をポールが演奏して製作したアルバムである。収録曲の一つで、テクノ・ポップの影響を受けたと思われる「Temporary Secretary」を初めて聴いた時は仰天した。

 「ポールの音楽に、ジャンルは存在しないと思っていたが、こんな曲まで書けるのか」

 というのが正直な感想だった。この曲は、万人受けするとは思えないが、割と近年のライヴでセットリストに入っていた。

 また、同じくアルバム収録曲の「Coming Up」は、ジョン・レノンに大きな刺激を与えることになった名曲である。

 個人的には2〜3曲を除いて、あまり好きになれず、聴くことが少ないアルバムである。これからポールの音楽を聴き始める人は、最初に手を出すべきではないと感じる。

 

 さて、最後に本年12月11日に発売される「マッカートニーIII」だが、果たしてどのようなアルバムになるのだろうか。過去のシリーズ2作と同様に、本作はポールが自宅スタジオで、全ての楽器を一人で演奏して制作したそうだ。

 新型コロナウイルスの影響で、ポールもライヴ活動ができなくなる中、スタジオワークに励んで作曲を続け、今回のアルバム制作に至ったとの事らしい。

 僕はこのアルバムに勝手な期待をしている。事情は全く異なるが、ビートルズはライヴ活動をやめてスタジオワークに専念し、数々の傑作を世に送り出した。よって、

 「近年、質の高いアルバムを作り続けているポールが、ライヴ活動をできなくなって、スタジオに篭って作曲のみに専念した時、果たしてどれほどの作品が生み出されるのか」

 という気持ちが、「マッカートニーIII」に期待をする理由である。

 発売日が楽しみだ!

 

 今回は以上。

 それではまた!