A Hard Day's Nightのジョン

 以前、「A Hard Day's Nightのポール」という記事で、アルバムにおけるポールの貢献度について書いた。未読の方は、下記リンクからページに飛び、ご一読いただきたい。

 

https://bs-pm.hatenablog.com/entry/2021/06/02/144534

 

 今回は同様に、アルバムに対するジョンの貢献度を、10曲も存在するジョン作の収録曲から3曲を紹介し、見てみようと思う。

 

1.「A Hard Day's Night」

 アルバムタイトルと同名の曲で、オープニングを飾るロックナンバーである。シングルとして米・英ともに1位を獲得している。聴きどころは、サビのポールのヴォーカルと、間奏のジョージのギターである。サビのヴォーカルをポールが任されたのは、"ジョンが歌うにはキーが高すぎる"という理由からである。

 

2.「I'm Happy Just To Dance With You」

 セカンドアルバムの前作、「With The Beatles」では、ジョージは、初の自作曲である「Dont Bother Me」を発表した。そして、サードアルバムに至って、ジョージは作曲家として成長し、遂に本領を発揮したのかと思いきや、この曲はジョンが提供し、ジョージがリードヴォーカルを担当したものだった。曲の完成度は高く、ジョンが自分で歌っても良さそうなものだが、当の本人は、

 「ジョージのために書いた曲で、僕には気恥ずかしくて歌えない」

 と述べている。歌詞についての発言だが、自分が恥ずかしくて歌えない内容をなぜ、ジョージには歌わせられるのだろうかと、思わず突っ込んでしまう。(笑)

 曲の完成度が高いだけに、是非ともジョンがリードヴォーカルを取るヴァージョンも聴いてみたかった。

 

3.「I'll Be Back」

 ジョンが、長らく行方不明だった父親と再会したことをきっかけに、書いた曲である。ジョンの生い立ちは、複雑である。父親は船乗りで不在の期間が長く、その間に母親が他の男性と同棲を始めたので、ジョンは母方の叔母に育てられた。その後、父親は行方不明になってしまい、さらに母親が、非番の警察官が飲酒運転する車にはねられ死亡するという、取り返しのつかない痛ましい事故まで起きてしまう。

 ジョンが心に負ってきた傷は、計り知れない。

 この曲では、再会した父親に対しての、ジョンの正直な気持ちが歌われている。歌詞にはこんな一節がある。

 

 「You could find better things to do Than to break my heart again」

 (もっと他にできることがあるだろう。俺の心を傷つけるより素敵なことが)

 

 幼少期から、父親にも母親にも甘えられず、ずっと孤独を感じていたであろうジョンの、怒り・悲しみ・失望といった負の感情が表れていると思う。

 

 ジョンは、アルバム「A Hard Day's Night」で名曲を量産するだけでなく、「I'll Be Back」では、自己の内面を歌詞で表現している。これは、その後の「I'm A Loser」や「Help!」といった、自己の感情を歌詞で吐き出すという、ジョンの作風への序章となる曲ではないだろうか。

 

 アルバム収録曲、全13曲がオリジナルで、ジョンが作曲数で圧倒的にリードしながらも、ポールもジョンに全く引けを取らない名曲を提供している「A Hard Day's Night」は、初期の最高傑作だと思う。

 

 今回は以上。

 それではまた!