ポール・マッカートニーのイメージ

 ポール・マッカートニーについて、

 「バラードが中心の作曲家」

 という誤ったイメージを抱いている人は、とても多いと思う。

 確かに、ビートルズ時代では、

 「And I Love Her」

 「Yesterday」

 「Here, There And Everywhere」

 

 ウイングスでは、

 「My Love」

 「Warm And Beautiful」

 「Silly Love Songs」

 

 さらにソロでも、

 「Here Today」

 「So Bad」

 「(I Want To) Come Home」

 

 等々と、ポールは数多くの美しいメロディのバラードを手掛けている。

 加えて、優しい表情の外見も手伝ってか、冒頭に述べたイメージが、ポールには定着してしまっている様に見える。

 

 今回は、その様なポールへのイメージを完全に覆してしまう曲を、上記のバラードと同じく、ビートルズ・ウイングス・ソロの三期に分けて挙げた上で、紹介してみようと思う。

 

 ビートルズ

 1.「I Saw Her Standing There」

 ビートルズのファースト・アルバム、「Please Please Me」の冒頭を飾り、疾走感のあるサウンド、ポールの力強いリード・ヴォーカル、ジョージのギターソロ等、聴きどころが満載の名曲である。近年におけるポールのライヴのセットリストにも入れられている。

 

 2.「Helter Skelter」

 ヘヴィ・メタルの元祖・原型とも言われている曲で、The Beatles(通称White Album)に収録されている。ザ・フーピート・タウンゼンドが、

 「今までのどの曲よりも激しく、妥協のない新曲を書いた」

 と語ったインタビュー記事に、ポールが触発された事が、作曲のきっかけとなった。ポールは、

 「それなら自分も、そんな曲を書いてみよう」

 と思い、この曲を書き上げた。エアロスミスU2・オアシス等、数多くのアーティストにカヴァーされている。

 

 3.「Oh! Darling」

 オールド・ロックンロール風の曲で、ポールの激しいヴォーカルが印象的だ。アルバム「Abby Road」に収録されている。

 ジョンは、この曲をたいへん気に入り、

 「是非、俺にヴォーカルを取らせて欲しい」と頼んだらしいが、ポールは譲らなかった。ポールは、この曲に合った理想の声でレコーディングするために、何時間も前からスタジオ入りして歌い込み、声を潰していたという。

 

 ウイングス

 1.「Jet」

 アルバム「Band On The Run」に収録されているロックナンバーで、曲名は、ポールが飼っていた愛犬の名前らしい。

 ポールは、この曲をとても気に入っているのか、長年に亘ってライヴのセットリストに入れている。

 

 2.「Junior's Farm」

 1974年に発売されたシングルで、米国チャートで3位を記録している。

 聴きどころは、ジミー・マッカロクのギターとエンディングでのポールのシャウトだ。YouTubeで見た、2013年のライヴでのこの曲のヴォーカルが、とても素晴らしかった。

アルバム、Venus And Mars(アーカイブ・コレクション)のCD2に収録されている。

 

 3.「Soily」

 かなり激しいロックで、ウイングス時代ではライヴの定番曲となっていた。個人的には躍動感が溢れる名曲だと思うのだが、どういう訳か、ずっと公式には発表されず、「Wings Over America」にライヴ音源のみの収録という形だった。

 2014年に発売されたアルバム、Venus And Mars(アーカイブ・コレクション)のCD2に、リハーサル・テイクが収録されている。個人的にはライヴ音源よりも、こちらの方が気に入っている。

 

 ソロ

 1.「Biker Like An Icon」

 アルバム、「Off The Ground」に収録されている曲で、発売後のワールド・ツアーでもセットリスト入りした。スタジオ音源よりもライヴ・ヴァージョンの方が、ヴォーカル・ギター共に激しく、聴き応えがある。

 

 2.「Run Devil Run」

 曲と同名の、ロックンロール・スタンダードのカヴァーアルバムに収録された、ポール自作の3曲中の1曲である。ビートルズ時代の「Helter Skelter」と同じく、ポールの絶叫する様なヴォーカルを聴く事ができる。自作曲でありながら、他に収録されているカヴァー曲の中に自然に溶け込み、全く違和感を覚えないところに、ポールの天才的な音楽センスを感じる。

 

 3.「Only Mama Knows」

 曲の冒頭と終わりに、ストリングスがある。イントロを聴いているうちは、バラード系の曲かと思うかもしれないが、一転してロックへと変わる。初めて聴いた時は、鳥肌が立ったのを覚えている。日本公演でも聴きたかったが、残念ながらセットリストには入らなかった…

アルバム「Memory Almost Full」に収録されている。

 

   以上で曲の紹介は、終わりである。

「バラードばかり書いている」

 との誤解を受ける事もあるポールだが、実は生粋のロックンローラーなのだ。今回、取り挙げた曲を是非、一度は聴いてみて頂きたい。ポールへのイメージが一新されると思う。

 

 今回は以上。

 それではまた!