名探偵コナン・レビュー3

●「アイドル密室殺人事件」(コミックス1巻収録)

 

 登場人物

 江戸川コナン

 毛利小五郎

 毛利蘭

 

 事件関係者

 藤江明義(男性22歳・作中で自殺)

   沖野ヨーコ(女性・藤江の元彼女でアイドル)

   山岸栄一(男性・沖野ヨーコのマネージャー)

   池沢ゆう子(女性・沖野ヨーコと同期デビューのアイドル)

 

   警察関係者

 目暮警部

 

 事件の動機

 恋愛関係のもつれ

 

 タイトルが、「殺人事件」となっていて、最初は、目暮警部・小五郎・コナンの3人共、殺人の線で推理を進めるが、真相は、自殺だった。

 準レギュラーキャラとも言える沖野ヨーコが初登場した話である。この「沖野ヨーコ」という名前だが、ビートルズファンの僕は、「オノ・ヨーコ」から取ったのかと思ったが、全く違った。(笑)

テレビドラマ化もされたという「救急ハート治療室」の作者である漫画家の「沖野ヨーコさん」が、キャラ名の由来との事である。

 

 また、この事件で初めて、「眠りの小五郎」の推理ショーが行われる。ここで、名探偵コナンをご存知でない読者の為に、「眠りの小五郎」について少々解説しようと思う。殺人事件の現場等で毛利小五郎が、いつもトンチンカンな推理を述べてしまう。そこで、江戸川コナン(工藤新一)が、腕時計型麻酔銃で小五郎を眠らせ、蝶ネクタイ型変声機で小五郎の声を出して、代わりに事件の真相を解き明かすというのが、「眠りの小五郎」である。当然、小五郎には麻酔銃を撃たれてより、事件が解決して目が覚めるまでの記憶が全く無い。目が覚めたら事件の真相は、自分が解き明かした事になっていて、周囲より

 「さすが名探偵!」

 と褒めちぎられるのである。(笑)

 今回の事件では、まだ腕時計型麻酔銃は無く、コナンが蹴飛ばした灰皿を、小五郎の後頭部に当てて気絶させるという力技で、「眠りの小五郎」の推理ショーが行われた。

 

 事件に話を戻そう。沖野ヨーコが毛利探偵事務所に、

●家の家具の位置が変わる。

●隠し撮りした写真が送られる。

●無言電話を掛けられる。

●夜道で人に追いかけられる。

等の、いわゆるストーカー被害の相談に訪れる。

 「沖野ヨーコが住むマンションの部屋を調べてみよう」

 という話になり、部屋に入ったところ、藤江明義の死体が発見された。部屋の中に本人の物と思われるイヤリングが落ちていた事から、池沢ゆう子も参考人として呼ばれる事になる。小五郎が、複数人の警察官に対して偉そうに、池沢ゆう子を現場に連れてくる様に指示を出すのだが、慌てて指示のままに動き出す警察官の姿が不自然だった。小五郎は、一探偵に過ぎない。しかも毛利蘭が、

 「仕事の依頼も来なくて」(コミックス1巻)

と発言している事から見ても、小五郎に探偵としての実績は、殆ど無かったのではないだろうか。その小五郎の一言に驚き、慌てて動き出す警察官の姿は、どう見ても違和感がある。小五郎は元刑事なのだが、現場に居た警察官は、その頃の部下なのかもしれない。そうでもなければ、この警察官の態度は説明ができないと思う。

 

 沖野ヨーコへの一連のストーカー行為の犯人は、池沢ゆう子だった。動機は、ドラマの主役が自分ではなく、沖野ヨーコに決まった事への嫉妬からの嫌がらせだった。無言電話をしたり、隠し撮りの写真を送っても平静を装うヨーコに対して、楽屋で盗んだ合鍵でヨーコの部屋に忍び込み、スキャンダルのネタを探すという、まさに犯罪行為を行なっていた。普通ならば、警察に被害届を出すところだが、沖野ヨーコは

 「これからもライバルで頑張ろう」

 と、池沢ゆう子を許した。世間にこの様なお人好しは、まず居ないだろうと思うと、この展開は、いかにも漫画らしいと言える。(笑)

 

 藤江明義は、元彼女である沖野ヨーコに殺人の容疑がかかる状況を作り出して自殺した。ヨーコのマネージャーの山岸は、アイドルに彼氏が居る事は好ましくないと思い、藤江にヨーコと別れる事を依頼した。藤江は、依頼のままに自分からヨーコを振ったものの、別れた後も、どうしても忘れる事ができなかった。何とかヨーコと話をしようと、彼女の部屋を訪れたところ、不法侵入中の池沢ゆう子と鉢合わせになる。サングラスを掛けていて、後ろ姿がヨーコにそっくりな池沢ゆう子を見た藤江は、ヨーコだと勘違いして声を掛けるが、驚いたゆう子は逃げようとして藤江と揉み合いになる。藤江は、完全にヨーコに見放されて拒絶されたと思い込み、絶望と憎しみの思いから、自殺したのである。

 

 「別れた後も忘れられない」

 という気持ちは理解できなくもないが、ヨーコと別れる事は、藤江が一度は自分で選択したのである。マネージャーの山岸からの

 「別れて欲しい」

 との依頼を、最初から断っていれば良かったのだ。

 

 話の最後に、行方不明になった新一を心配して涙を流す蘭を見たコナンが、変声機で新一の声を出して、公衆電話から毛利探偵事務所に電話を入れる描写があるが、時の流れを感じた。この話が収録されているコミックス1巻の1刷が発行されたのは、1994年(平成6年)である。まだまだ公衆電話が日常的に使用されていた時期である。そして、2021年(令和3年)現在のコナンは、何とスマホを使用している。(笑)

作中での時間の経過は、まだ半年程度との事らしい。半年で通信手段が、公衆電話からスマホまで進化している事になる。凄い技術革新だ!(笑)

いま読み返してみて、時の流れと共に、これだけの長期間に亘って連載を続けている、青山剛昌さんの凄さを改めて感じた。

 

 今回は以上。

 それではまた!