名探偵コナン・レビュー5

●「奇妙な人捜し殺人事件」(コミックス2巻収録)

 

   登場人物

 

 江戸川コナン

 毛利小五郎

 毛利蘭

 阿笠博士

 

 事件関係者

 

 広田健三(男性・被害者・48歳)

 

   広田雅美(女性・偽名で本名は宮野明美・ジンに射殺される)

 

   広田明(広田健三殺害の犯人・男性・偽名・28歳)

 

   広田明から依頼を受けた探偵(男性・氏名不明)

 

   黒の組織

 ジン

 ウォッカ

 

 警察関係者

 目暮警部

 

 事件の動機

 共犯者の裏切りへの怒り

 

 

 阿笠博士の発明品である「犯人追跡メガネ」が初登場した話である。冒頭で、阿笠博士からコナンがメガネを譲り受けて、性能の説明を受けている。このメガネは、付属品の発信機シールを追跡対象に貼り付ければ、半径20キロ以内なら、どこにいても居場所を割り出せるというものだ。

 コナンは、コミックス1巻で阿笠博士の事を

 「風変わりな発明家で、自分じゃ天才といってるけど、作った物はガラクタばかり!!」

 と貶しているが、とんでもない。ハッキリ言って阿笠博士は天才である。工藤新一が幼児化してから、この話までの短期間に、

 「蝶ネクタイ型変声機」

 「キック力増強シューズ」

 「犯人追跡メガネ」

 と、三つのメカを発明した。そのどれもが、コナンが正体を隠しながら犯人を追い詰め、捕らえる事に役立つ優れ物ばかりである。今回は、この「犯人追跡メガネ」が大活躍する事になる。

 

 毛利探偵事務所に、

 「わたしの父を捜してください!!」

 と、自称高校生の広田雅美と名乗る女性が、依頼に現れた。東京に出稼ぎに来ている父親が、仕事を辞めて行方不明になり、警察が捜索しても見つからず、最後に毛利小五郎を頼ったという事だった。

 コナンが「犯人追跡メガネ」の性能を試そうとして、発信機シールを毛利蘭に貼り付けようとするのだが、コードに足を引っ掛けて転び、ソファに座っている広田雅美の腕時計に付着させてしまった。

 依頼から1週間後、探偵事務所のテレビで、たまたま競馬中継を見たコナンが、

 「ゴーカイテイオー」という馬名を耳にし、広田雅美の父親の広田健三が飼っている、4匹の猫の名前を組み合わせたのと一致している事に、メモを取りながら気付いた。蘭が何気なくそのメモを見ながら、

 「広田さんは、競馬好きだったのよ!!…競馬場に行けば会えるよ、きっと!!」

 と、突拍子も無い事を言い出すのだが、東京競馬場に足を運んだところ、本当に広田健三を発見してしまった。(笑)

 

 単なる人捜しであれば、これで一件落着なのだが、小五郎の連絡を受けた広田雅美が、住まいのアパートを訪ねたところ、娘と久々の再会を果たした筈の広田健三の顔は、恐怖で怯え、引きつっている様な表情であった。

 

 広田健三と雅美は、実際には親子ではなく、現金輸送車から10億円を奪った三人組の強盗犯の内の二人であった。広田健三は、強奪した10億円を独り占めしようとして持ち逃げした。そこで広田雅美は毛利小五郎に、残る共犯者の広田明は他の探偵に、それぞれ広田健三の行方を捜させた。広田雅美に居場所を突き止められ、

 「仕返しをされる」

 との恐怖で広田健三は、再会の際に怯えた表情となったのだった。

 

 ここで、広田健三には、毛利小五郎に助けを求めるという手段も有った訳だが、そうすれば命は助かっても必ず警察に通報されて逮捕される事になる。殺されるかもしれない状況に身を置かれるよりも、助けを求めて捕まった方が利口だとは思うが、人間は極限の恐怖を感じると、冷静な判断ができなくなると思う。

 

 後日、広田健三は、住まいのアパートで殺害されてしまった。犯人は広田明である。やはり、広田健三の金の持ち逃げに怒り、勢い余って殺してしまったのだ。広田雅美も行方不明になるが、コナンは、彼女の腕時計に発信機が付着している事を思い出して、追跡メガネで居場所を特定する。しかし、そこに彼女の姿は無く、広田明と遭遇する。

 

 ここで追跡メガネの電池が切れ、コナンは捜索を中断して探偵事務所に戻ってきたところ、毛利小五郎に対して

 「あなたも私と同じ依頼を受けたんじゃないかと気になって…広田さんを捜してくれという…」

 と述べる探偵が現れ、

 「私は、この男に頼まれたんです」

 と言って見せてきた写真に写っていたのは、広田明だった。

 

 広田明が、広田雅美の腕時計を身につけていると判断したコナンは、追跡メガネで居場所を特定し、滞在先であるホテルに踏み込んだ。この発信機が付着した腕時計は、元々は広田雅美の物だったが、広田明の腕時計が壊れてしまったので、代用品として与えた物であった。広田明は、青酸カリを飲まされて、部屋の中で死亡していた。コナンは、ホテルのエレベーターですれ違った女性が広田雅美だと気づき、後を追いかけるが、発見した時に彼女は銃弾を浴びて瀕死の状態だった。

 

 彼女は追いかけて来たコナンに、真実を告げる。広田雅美を撃ったのは、黒の組織のジンだった。広田雅美の本名は宮野明美で、黒の組織の末端構成員だった。彼女はジンと、

 "現金輸送車から10億円を強奪する仕事が終わったら、妹と共に黒の組織を抜ける"

  という内容の約束をしていた。しかし、ジンには最初から宮野明美との約束を守る気は無く、彼女を騙していたのだ。10億円強奪事件は、黒の組織によって計画され、宮野明美が指示を受けて実行犯を務めたのだった。広田健三と広田明は、宮野明美が誘って強盗の計画に加えたメンバーだが、ジンは事が済めば全員を殺すつもりでいた。広田明が飲んだ青酸カリは、ジンが宮野明美睡眠薬と偽って渡した物だった。広田健三は既に殺害されているので、残る宮野明美を消せば、強盗の実行犯を全員始末でき、黒の組織は金だけを入手できるという思惑である。この金は、コナンが先手を打って警察に回収させたので、黒の組織の手に渡る事は無かった。

 

 宮野の明美の妹の名前は宮野志保で、科学者として黒の組織に使われていた。組織でのコードネームはシェリーである。姉の宮野明美が組織に殺害された事に反発して歯向かったが、拘束されてしまい、自決しようとして隠し持っていたAPTX(アポトキシン)4869を飲んだところ、工藤新一と同じく身体が幼児化して手錠から手が抜け、逃げる事ができた。その後、阿笠博士の家で預かられて、灰原哀という仮の名前を名乗り、工藤新一の味方になって活躍する様になる。コミックス2巻では、彼女のシルエットのみが出ていて、初登場はコミックス18巻になる。コミックスの1刷は、それぞれ、2巻は1994年、18巻は1998年なので、4年を掛けて伏線が回収された事になる。

 

 僕はリアルタイムで原作を読んでいた訳ではないのだが、もしコミックを買わずにサンデーのみを読んでいたら、伏線そのものを忘れてしまいそうである。(笑)

 

 今回は以上。

 それではまた!