名探偵コナン・レビュー3

●「アイドル密室殺人事件」(コミックス1巻収録)

 

 登場人物

 江戸川コナン

 毛利小五郎

 毛利蘭

 

 事件関係者

 藤江明義(男性22歳・作中で自殺)

   沖野ヨーコ(女性・藤江の元彼女でアイドル)

   山岸栄一(男性・沖野ヨーコのマネージャー)

   池沢ゆう子(女性・沖野ヨーコと同期デビューのアイドル)

 

   警察関係者

 目暮警部

 

 事件の動機

 恋愛関係のもつれ

 

 タイトルが、「殺人事件」となっていて、最初は、目暮警部・小五郎・コナンの3人共、殺人の線で推理を進めるが、真相は、自殺だった。

 準レギュラーキャラとも言える沖野ヨーコが初登場した話である。この「沖野ヨーコ」という名前だが、ビートルズファンの僕は、「オノ・ヨーコ」から取ったのかと思ったが、全く違った。(笑)

テレビドラマ化もされたという「救急ハート治療室」の作者である漫画家の「沖野ヨーコさん」が、キャラ名の由来との事である。

 

 また、この事件で初めて、「眠りの小五郎」の推理ショーが行われる。ここで、名探偵コナンをご存知でない読者の為に、「眠りの小五郎」について少々解説しようと思う。殺人事件の現場等で毛利小五郎が、いつもトンチンカンな推理を述べてしまう。そこで、江戸川コナン(工藤新一)が、腕時計型麻酔銃で小五郎を眠らせ、蝶ネクタイ型変声機で小五郎の声を出して、代わりに事件の真相を解き明かすというのが、「眠りの小五郎」である。当然、小五郎には麻酔銃を撃たれてより、事件が解決して目が覚めるまでの記憶が全く無い。目が覚めたら事件の真相は、自分が解き明かした事になっていて、周囲より

 「さすが名探偵!」

 と褒めちぎられるのである。(笑)

 今回の事件では、まだ腕時計型麻酔銃は無く、コナンが蹴飛ばした灰皿を、小五郎の後頭部に当てて気絶させるという力技で、「眠りの小五郎」の推理ショーが行われた。

 

 事件に話を戻そう。沖野ヨーコが毛利探偵事務所に、

●家の家具の位置が変わる。

●隠し撮りした写真が送られる。

●無言電話を掛けられる。

●夜道で人に追いかけられる。

等の、いわゆるストーカー被害の相談に訪れる。

 「沖野ヨーコが住むマンションの部屋を調べてみよう」

 という話になり、部屋に入ったところ、藤江明義の死体が発見された。部屋の中に本人の物と思われるイヤリングが落ちていた事から、池沢ゆう子も参考人として呼ばれる事になる。小五郎が、複数人の警察官に対して偉そうに、池沢ゆう子を現場に連れてくる様に指示を出すのだが、慌てて指示のままに動き出す警察官の姿が不自然だった。小五郎は、一探偵に過ぎない。しかも毛利蘭が、

 「仕事の依頼も来なくて」(コミックス1巻)

と発言している事から見ても、小五郎に探偵としての実績は、殆ど無かったのではないだろうか。その小五郎の一言に驚き、慌てて動き出す警察官の姿は、どう見ても違和感がある。小五郎は元刑事なのだが、現場に居た警察官は、その頃の部下なのかもしれない。そうでもなければ、この警察官の態度は説明ができないと思う。

 

 沖野ヨーコへの一連のストーカー行為の犯人は、池沢ゆう子だった。動機は、ドラマの主役が自分ではなく、沖野ヨーコに決まった事への嫉妬からの嫌がらせだった。無言電話をしたり、隠し撮りの写真を送っても平静を装うヨーコに対して、楽屋で盗んだ合鍵でヨーコの部屋に忍び込み、スキャンダルのネタを探すという、まさに犯罪行為を行なっていた。普通ならば、警察に被害届を出すところだが、沖野ヨーコは

 「これからもライバルで頑張ろう」

 と、池沢ゆう子を許した。世間にこの様なお人好しは、まず居ないだろうと思うと、この展開は、いかにも漫画らしいと言える。(笑)

 

 藤江明義は、元彼女である沖野ヨーコに殺人の容疑がかかる状況を作り出して自殺した。ヨーコのマネージャーの山岸は、アイドルに彼氏が居る事は好ましくないと思い、藤江にヨーコと別れる事を依頼した。藤江は、依頼のままに自分からヨーコを振ったものの、別れた後も、どうしても忘れる事ができなかった。何とかヨーコと話をしようと、彼女の部屋を訪れたところ、不法侵入中の池沢ゆう子と鉢合わせになる。サングラスを掛けていて、後ろ姿がヨーコにそっくりな池沢ゆう子を見た藤江は、ヨーコだと勘違いして声を掛けるが、驚いたゆう子は逃げようとして藤江と揉み合いになる。藤江は、完全にヨーコに見放されて拒絶されたと思い込み、絶望と憎しみの思いから、自殺したのである。

 

 「別れた後も忘れられない」

 という気持ちは理解できなくもないが、ヨーコと別れる事は、藤江が一度は自分で選択したのである。マネージャーの山岸からの

 「別れて欲しい」

 との依頼を、最初から断っていれば良かったのだ。

 

 話の最後に、行方不明になった新一を心配して涙を流す蘭を見たコナンが、変声機で新一の声を出して、公衆電話から毛利探偵事務所に電話を入れる描写があるが、時の流れを感じた。この話が収録されているコミックス1巻の1刷が発行されたのは、1994年(平成6年)である。まだまだ公衆電話が日常的に使用されていた時期である。そして、2021年(令和3年)現在のコナンは、何とスマホを使用している。(笑)

作中での時間の経過は、まだ半年程度との事らしい。半年で通信手段が、公衆電話からスマホまで進化している事になる。凄い技術革新だ!(笑)

いま読み返してみて、時の流れと共に、これだけの長期間に亘って連載を続けている、青山剛昌さんの凄さを改めて感じた。

 

 今回は以上。

 それではまた!

 


 

ポール・マッカートニー 夢のセットリスト

 2020年は、新型コロナウイルスの世界的な大流行で、大規模なライヴが開催不能となった。

 ポール・マッカートニーも自宅で過ごす時間が増え、ライヴができずに有り余った時間は、自然と創作活動へと向けられ、12月には「マッカートニーIII」というニューアルバムをリリースした。

 ポールは毎年の様に、世界各地でライヴをしてきたので、ファンの前に立って歌えなくなった事には、恐らく口惜しい思いを抱いているのではないだろうか。

 また世界中のファンも、ポールが再びライヴ・ステージに立てる日が来る事を念願していると思う。

 生きる伝説と言っても過言ではないポールのライヴは、観る事ができるだけで一生の宝となるだろう。

 しかし、贅沢な話である事は百も承知で述べたいのだが、近年のポールのライヴ・セットリストは、あまりにもビートルズに偏っている気がする。僕が観に行った2013年の東京ドームでのライヴは、全37曲中の23曲がビートルズナンバーである。(Golden Slumbers/Carry That Weight/The Endは1曲としてカウント)

 そして、このビートルズ中心のセットリストの傾向は、その後も続くのである。

 ポールの音楽の功績は、決してビートルズ時代だけではない。ソロとして、ウイングスとして、またスティービー・ワンダーマイケル・ジャクソンとのコラボで、ビートルズ解散後に、全米シングルチャートで1位を9曲も獲得している。あのローリング・ストーンズの全米1位獲得数が8曲である事を見れば、ポールがいかに凄いアーティストかわかるだろう。

 

 そこで、ビートルズの曲は、もう充分過ぎるほどポールのライヴで聴いたので、ソロとウイングスのみで構成した、僕が望む夢のセットリストを作ってみた。

 

1.Venus And Mars~Rock Show~Jet

2.Smile Away

3.Helen Wheels

4.Spin It On

5.Driving Rain

6.Come On To Me

7.Only Mama Knows

8.Biker Like An Icon

9.Run Devil Run

10.Maybe I'm Amazed

11.My Love

12.Only Love Remains

13.(I Want To) Come Home

14.Sally G

15.With A Little Luck

16.Another Day

17.The Kiss Of Venus

18.Put It There

19.Jenny Wren

20.Here Today

21.New

22.Tomorrow

23.Pipes Of Peace

24.Only Our Hearts

25.No More Lonely Nights

26.Coming Up

27.Young Boy

28.Band On The Run

29.Wanderlust

30.The Back Seat Of My Car

31.Live And Let Die

-- encore --

32.Letting Go

33.Hi,Hi,Hi

34.Junior's Farm

-- encore2 --

35.Silly Love Songs

36.Soily

 

   以上である。

ザ・ファイアーマンを除く、ポールのほぼ全てのキャリアが網羅されたセットリストである。今後、ポールのライヴが再開されたとしても、この様なセットリストが実現する可能性は、限りなくゼロに等しい。しかし、上記のセットリストは、どれも一度は聴かなければもったいないと思うほど、良い曲ばかりである。(個人的な感想)

 

 是非ともポールには、ソロやウイングスの曲を、もっとライヴで歌ってもらいたいものである。

 

 今回は以上。

 それではまた!

名探偵コナン・レビュー2

 ●「社長令嬢誘拐事件」(コミックス1巻収録)

 

  登場人物

  江戸川コナン

  毛利蘭

  毛利小五郎

 

  事件関係者

  谷晶子(女性・10歳)

  谷晶子の父親

  麻生(男性・谷家の執事)

       ジャンボ(谷家の飼い犬)

       誘拐犯人(男性)

 

  事件の動機

  父親に構ってもらう為の狂言誘拐

  金目当ての誘拐

 

 黒の組織のジンにAPTX(アポトキシン)4869を飲まされて、身体が幼児化した工藤新一が、江戸川コナンとして最初に解決した事件であり、その手柄は全て毛利小五郎のものとなる。

そしてこれより、毛利小五郎はコナンのお陰で、ヘボ探偵から名探偵へと変貌していくのである。(笑)

 

 この事件は、狂言誘拐の筈だったのが、本当の誘拐になってしまったというものだ。

 

 谷晶子は、三年前に母親が亡くなってからも、忙しく働き続ける会社経営者の父親に構ってもらう為、執事の麻生に頼み込み、共謀して狂言誘拐を企てる。その計画は、全身黒ずくめの大男に晶子が誘拐された事にして、解放の条件として会社を一ヶ月間、閉鎖する事を晶子の父親に要求するという内容だった。晶子は狂言誘拐の事実が発覚後、

 "パパの会社が休みになれば、パパと一緒に過ごせると思って、麻生さんに手伝ってもらって事件を起こした"

という趣旨の発言をして、動機を正直に告白している。

 

 この話を読んだ時に、僕は自分の父親の姿が思い浮かんだ。父は僕が子供の頃、訪問販売の仕事をしていたのだが、給料が歩合制だったので、売り上げが順調な時も、

 「いつ売れなくなるかわからない」

 と言っては休日返上で働いていた。寂しく感じる事もあったが、家族を養う責任を担って必死に働いてくれた父には、とても感謝している。仕事と家庭のバランスを調整するのは、とても難しい事だと思う。

 

 事件に話を戻すが、狂言誘拐の計画を遂行中の晶子は、滞在先のホテルで金目当ての男に本当に誘拐されてしまう。コナンは、晶子が電話で示したヒントを頼りに、谷家の飼い犬であるジャンボを連れて捜索に向かい、監禁場所を割り出した。犯人と戦闘になるも、幼児化した身体では太刀打ちできず、殺されかけたところに蘭が間一髪で助けに来るのだが、その強さがハンパじゃない。(笑)

バットでの攻撃を腕で受け止めて、あっという間に空手で犯人をボコボコにしてしまった。コナンは唖然とした表情で蘭を見つめていた。名探偵コナンは推理漫画なのだが、まるで他の漫画から現れた様な強さだ。(笑)

 事件解決後、晶子の切実な気持ちを知った父親は、晶子との時間も大切にしようと心に決めた。

 晶子の為を思っての行動とはいえ、狂言誘拐に協力した麻生がクビにならないのは、やはり漫画の世界の話だからであろう。(笑)

 

 今回は以上。

 それではまた!

 


 

名探偵コナン・レビュー1

 日本を代表する推理漫画といえば、名探偵コナンと、金田一少年の事件簿だろう。

 名探偵コナンは平成6年に、金田一少年の事件簿は平成4年に、それぞれ連載が始まっている。コナンは、令和3年現在も連載中で、金田一は、少年時代のストーリーが終わり、その20年後を描いた続編である「金田一37歳の事件簿」として、形を変えて連載されている。

 両者の大きな違いは、金田一では作中において必ず殺人(未遂もある)事件が発生するが、コナンは必ずしも、そうとは限らないということである。コナンにおいては、殺人事件の他にも、主人公の江戸川コナン(工藤新一)と、その友人で構成される少年探偵団が、力を合わせて悪人と戦ったり、怪盗キッドという泥棒と、知恵比べとも言える勝負をするストーリー等も描かれている。そして何よりも、工藤新一にAPTX(アポトキシン)4869という毒薬を飲ませて、身体を幼児化させた黒の組織との対決が、名探偵コナンの最大の目玉である。

 

 両者とも、作中の事件におけるトリック等を考察・解説したサイトは、山ほどある。よって、事件の犯人の動機や、登場人物の人間関係について感じた事を、僕なりに書いてみようと思う。

 

 今回は、名探偵コナンのレビュー第1回目である。

 

 ●「ジェットコースター殺人事件」(コミックス1巻収録)

 

  登場人物

  工藤新一

  毛利蘭

 

  黒の組織

  ジン

  ウォッカ

 

  事件関係者

  岸田(男性・被害者)

       ひとみ(女性・犯人)

       愛子(岸田の彼女)

       友人A(女性・氏名不明)

 

      警察関係者

  目暮警部

  

  事件の動機

  恋愛関係のもつれによる復讐

 

 この事件は、工藤新一と、黒の組織の構成員であるジン、ウォッカとの出会いを描く上でのオマケ的な存在だろう。

 工藤新一は、幼なじみである毛利蘭と、デートで来たトロピカルランドにおいて、殺人事件に遭遇する。二人が乗っていたジェットコースターがトンネルを潜った直後、新一の真後ろに乗っていた岸田の首が飛んで死亡する。ジェットコースターには、闇取引の相手の姿を確認する為に、黒の組織のジン、ウォッカも同乗していた。

 ジェットコースターのスピードとパワーを利用して首を飛ばすという、残忍な殺害方法が物語っているが、犯行動機は復讐である。岸田は元々、ひとみと付き合っていたが、愛子に乗り換えてしまい、それが許せずにひとみは犯行に及んだ。岸田殺害の罪を愛子に被せて、自身も犯行後に自殺する為に大量の睡眠薬を所持していたが、新一に真相を見破られて警察に逮捕された。

 ひとみは、

 "あなた達と会う前から、私達は結ばれていた"

 という趣旨の発言を、愛子と友人Aに対してしている。よって愛子は、ひとみが過去に岸田と交際していたという事を知らなかったのかもしれない。仮にそうであれば、付き合っていた彼氏を友人に殺害され、さらに殺人犯の汚名まで着せられそうになったという点で、一番の被害者は愛子だと思う。

 この事件解決の直後、人気の無い場所でウォッカが闇取引を行う現場を目撃した新一は、背後からジンの不意打ちを食らって昏倒し、APTX4869を飲まされて身体が幼児化してしまう。

 前に述べたように、メインは黒の組織との出会いを描く事であるから、発生した殺人事件そのものは、凝ったトリックや演出は無く、1話で解決するという単純なものだった。その後のストーリーでは、事件発生から解決まで大体、3〜4話の構成という形が多い。

 事件が単純で短いだけに、一番印象に残ったのは、取り引き相手が一人で来ている事を確認する為だけに、ジェットコースターに仲良く並んで乗り込んだジンとウォッカの姿だった。(笑)

 

 今回は以上。

 それではまた!

 


 

ジョン・レノンのYesterdayへの嫉妬

 ポール・マッカートニーが、ビートルズ時代に作曲した不朽の名曲、「Yesterday」に対して、ジョン・レノンは嫉妬心を抱いていたのではないだろうか。

 

 この事を説明する前にまず、「Yesterday」がいかに凄い曲であるかを、述べてみよう。

 ポールは、この曲を夢の中で作曲し、目を覚ました時にメロディが頭の中に残っていたそうだ。ポールは、朝食前に夢の中で完成していた曲という事で、「Scrambled Eggs」という仮タイトルを、最初は付けていたらしい。その曲名で発表されなくて良かった。美しいメロディが台無しになる気がする。(笑)

 

 作曲におけるエピソードも凄いが、他のアーティストに与えた影響も多大で、「Yesterday」は世界で最も多くカヴァーされた曲として、ギネス・ワールド・レコーズに認定されている。

 

 さて、本題に戻るが、「Yesterday」に対してのジョン・レノンの言動を見ると、嫉妬心が垣間見えてくる。ジョンは、

 「よくできている。素晴らしい。自分の曲だったらと思った事は一度も無いけど」

 と述べ、「Yesterday」に対して褒めながらも、皮肉で発言を締めている。

 また、ジョン自身が「Yesterday」の作者だと勘違いされる事も有ったらしく、そんな状況に辟易していたらしい。

 さらに、極めつけは、ジョンのソロアルバム「Imagine」に収録されている、「How Do You Sleep?」の歌詞でポールに対して、

 「お前の傑作なんて、『Yesterday』だけだ」

 と痛烈に罵っている。

 これらの言動の真意を推察するに、

 

 「Yesterday」は、本当はジョンが、自分の曲だったら良かったと思う程の名曲だったが、現実の作者はポールであり、ジョンを作者と勘違いして寄せられる称賛の声は、本来はポールが浴びるべきものだった。この鬱憤が、仲違いをしたポールに対して、嫉妬心を抱いていた「Yesterday」を取り上げての、曲の歌詞での口撃となって表現されたという事ではないだろうか。

 

 ジョンは、彼の代表作とも言うべき「Imagine」を書き上げた際に、

 「ようやく『Yesterday』と同じくらいの名曲が作れた」

 と語って喜んだという。この発言は、ジョンの中でずっと「Yesterday」に対して、複雑な気持ちが有った事の証拠だろう。

 

 それにしても、ジョンに対してこの様な感情を抱かせる曲が書けるのは、恐らくポールだけだろう。

 

 そして、ジョンも本当は、ポールの圧倒的な音楽の才能を認めていて、

 

 「俺が音楽界に残した最大の功績は、ポール・マッカートニーを発掘したことだ」

 と述べている。

 

 その様な、生きる伝説とも言うべきポール・マッカートニーが、78歳を迎えた現在も現役で、新作を出し続けてくれているのは、本当に凄くて有難い事だ。

 

 今回は以上。

 それではまた!

ポール・マッカートニーの精神力2

 本ブログ初の記事である、

 「ポール・マッカートニーの精神力」

に於いて、ポールが様々な逆境の中、ウイングスの大傑作アルバム、「Band On The Run」を完成させた、その凄まじい精神力について述べた。未読の方は是非、下記のリンクからページに飛び、目を通してみて欲しい。

 

https://bs-pm.hatenablog.com/entry/2020/09/16/171830

 

 さて、今回は、ポールの精神力の強さを示すエピソードを、もう一つ紹介してみようと思う。それは、ビートルズの敏腕マネージャーである、ブライアン・エプスタインの死後の、ポールの爆発的な楽曲の創作力である。

 

 ここで先ず、ブライアン・エプスタインの功績について紹介しておきたい。彼の存在が無ければビートルズは、世界の頂点に立てる程までの爆発的な売れ方は、しなかったかもしれない。いや、レコードデビューすら、危うかった可能性すらある。

 ブライアンは、ビートルズとマネジメント契約後、様々なレコード会社に売り込みを掛けるものの、断られ続け、デッカ社の担当者に至っては、

 「ギターグループは、もう時代遅れですよ。彼等(ビートルズ)のショウ・ビジネスでの未来は無いですね」

 とまで放言した。それに対してブライアンは、

 「ビートルズは、エルヴィス・プレスリーよりもビッグになります」

 とタンカを切ったそうだ。デッカ社の担当者は、恐らく鼻で笑っただろうが、ブライアンのこの発言は、遠くない未来に事実となるのである。デッカ社のオーディション不合格後、ブライアンは、デッカ・スタジオでの演奏を録音したテープを、EMIに持ち込んだ。その後、紆余曲折を経て、EMI傘下のパーロフォンとのレコード契約が決定した。そして、このパーロフォンには、ビートルズのほぼ全ての作品に関わりプロデュースした、あのジョージ・マーティンが居たというのであるから、鳥肌が立つ程の奇跡としか言いようが無い。まさにブライアンが、必死の思いでビートルズをレコード会社との契約に漕ぎ着け、名プロデューサーとの出会いを実現させたのである。

 その後、ブライアンは、ビートルズを万人受けさせる為の策を必死に考えた。それまでの革ジャンにリーゼントという、不良に見られてしまうビートルズのイメージを一新させた。服装はスーツにネクタイ、さらにライヴ演奏では、一曲終わるごとに全員でお辞儀をさせた。そして髪型は、ポールとジョンが旅行中に影響を受けて取り入れた、マッシュルームカットへと変わった。勿論、ビートルズの楽曲に力が有る事が前提だが、ブライアンの戦略は当たり、ビートルズは爆発的に売れる様になった。

 

 その様な、ビートルズの柱とも言うべきブライアンが、1967年8月27日、薬物の過剰摂取によって死亡してしまった。この時の衝撃をジョン・レノンは、

 「エプスタインが死んだ時、もうビートルズは終わったと思った」

 と発言している。

 

 ポールは、この状況に危機感を抱き、直ちに「マジカル・ミステリー・ツアー」というプロジェクトを立ち上げて取り掛かった。この頃からビートルズ解散までの、ポールの作品の量と質は、尋常ではない。先ずはシングルから見てみよう。

 

「Hello Goodbye」

「Lady Madonna

Hey Jude

「Get Back」

「Let It Be」

The Long And Winding Road

 

 以上のシングルは、全てがポールの作曲で、ブライアンが死去した1967年〜1970年の間に発売され、全てが、全米或いは全英チャートで1位を獲得している。とても人間業とは思えない…

 

 次に、アルバムでのポールの貢献だが、これも凄い。何曲か紹介してみよう。

 

 1.ガリレオ・ガリレイをモチーフに書き、リコーダーの音が印象的な「The Fool On The Hill」(Magical Mystery Tour 収録)

 

2.アルペジオの練習として、多くのギター初心者に弾かれ、ポール自身もアコギ一本でライヴで弾き語る「Blackbird」(The Beatles 収録)

 

3.子供にも受けそうな陽気な曲調で、何回も録音のやり直しをポールから要求されたジョンが、やけになって弾いたピアノがイントロに採用された「Ob-La-Di,Ob-La-Da」(The Beatles 収録)

 

4.元祖ヘヴィーメタルと言われ、多くのアーティストがカヴァーしている「Helter Skelter」(The Beatles 収録)

 

5.天才、ジョン・レノンをして、ヴォーカルを譲る事を要請させた名曲、「Oh! Darling」(Abbey Road 収録)

 

6.曲の断片をメドレーにしたもので、近年のポールのライヴのフィナーレを飾る「Golden Slumbers〜Carry That Weight〜The End」(A bbey Road 収録)

 等々である。

 

 まさに、驚異的という他は無い。ポールは、ビートルズが解散に向かって徐々に分裂していくという逆境に立たされても、その環境に潰されず、何とかグループを盛り立てようとして、元来の比類無き音楽的才能を爆発させ、圧倒的な量と質の名曲を作り出したのである。

 

 勿論、天才のポールだからこそ、この偉業を成し遂げられたのだろう。しかし、いかなる逆境にも折れずに立ち向かう、この精神力は、我が人生に於いても見習いたいと、記事を書きながら思った。

 

 今回は以上。

 それではまた!

 

 

ポール・マッカートニーのイメージ

 ポール・マッカートニーについて、

 「バラードが中心の作曲家」

 という誤ったイメージを抱いている人は、とても多いと思う。

 確かに、ビートルズ時代では、

 「And I Love Her」

 「Yesterday」

 「Here, There And Everywhere」

 

 ウイングスでは、

 「My Love」

 「Warm And Beautiful」

 「Silly Love Songs」

 

 さらにソロでも、

 「Here Today」

 「So Bad」

 「(I Want To) Come Home」

 

 等々と、ポールは数多くの美しいメロディのバラードを手掛けている。

 加えて、優しい表情の外見も手伝ってか、冒頭に述べたイメージが、ポールには定着してしまっている様に見える。

 

 今回は、その様なポールへのイメージを完全に覆してしまう曲を、上記のバラードと同じく、ビートルズ・ウイングス・ソロの三期に分けて挙げた上で、紹介してみようと思う。

 

 ビートルズ

 1.「I Saw Her Standing There」

 ビートルズのファースト・アルバム、「Please Please Me」の冒頭を飾り、疾走感のあるサウンド、ポールの力強いリード・ヴォーカル、ジョージのギターソロ等、聴きどころが満載の名曲である。近年におけるポールのライヴのセットリストにも入れられている。

 

 2.「Helter Skelter」

 ヘヴィ・メタルの元祖・原型とも言われている曲で、The Beatles(通称White Album)に収録されている。ザ・フーピート・タウンゼンドが、

 「今までのどの曲よりも激しく、妥協のない新曲を書いた」

 と語ったインタビュー記事に、ポールが触発された事が、作曲のきっかけとなった。ポールは、

 「それなら自分も、そんな曲を書いてみよう」

 と思い、この曲を書き上げた。エアロスミスU2・オアシス等、数多くのアーティストにカヴァーされている。

 

 3.「Oh! Darling」

 オールド・ロックンロール風の曲で、ポールの激しいヴォーカルが印象的だ。アルバム「Abby Road」に収録されている。

 ジョンは、この曲をたいへん気に入り、

 「是非、俺にヴォーカルを取らせて欲しい」と頼んだらしいが、ポールは譲らなかった。ポールは、この曲に合った理想の声でレコーディングするために、何時間も前からスタジオ入りして歌い込み、声を潰していたという。

 

 ウイングス

 1.「Jet」

 アルバム「Band On The Run」に収録されているロックナンバーで、曲名は、ポールが飼っていた愛犬の名前らしい。

 ポールは、この曲をとても気に入っているのか、長年に亘ってライヴのセットリストに入れている。

 

 2.「Junior's Farm」

 1974年に発売されたシングルで、米国チャートで3位を記録している。

 聴きどころは、ジミー・マッカロクのギターとエンディングでのポールのシャウトだ。YouTubeで見た、2013年のライヴでのこの曲のヴォーカルが、とても素晴らしかった。

アルバム、Venus And Mars(アーカイブ・コレクション)のCD2に収録されている。

 

 3.「Soily」

 かなり激しいロックで、ウイングス時代ではライヴの定番曲となっていた。個人的には躍動感が溢れる名曲だと思うのだが、どういう訳か、ずっと公式には発表されず、「Wings Over America」にライヴ音源のみの収録という形だった。

 2014年に発売されたアルバム、Venus And Mars(アーカイブ・コレクション)のCD2に、リハーサル・テイクが収録されている。個人的にはライヴ音源よりも、こちらの方が気に入っている。

 

 ソロ

 1.「Biker Like An Icon」

 アルバム、「Off The Ground」に収録されている曲で、発売後のワールド・ツアーでもセットリスト入りした。スタジオ音源よりもライヴ・ヴァージョンの方が、ヴォーカル・ギター共に激しく、聴き応えがある。

 

 2.「Run Devil Run」

 曲と同名の、ロックンロール・スタンダードのカヴァーアルバムに収録された、ポール自作の3曲中の1曲である。ビートルズ時代の「Helter Skelter」と同じく、ポールの絶叫する様なヴォーカルを聴く事ができる。自作曲でありながら、他に収録されているカヴァー曲の中に自然に溶け込み、全く違和感を覚えないところに、ポールの天才的な音楽センスを感じる。

 

 3.「Only Mama Knows」

 曲の冒頭と終わりに、ストリングスがある。イントロを聴いているうちは、バラード系の曲かと思うかもしれないが、一転してロックへと変わる。初めて聴いた時は、鳥肌が立ったのを覚えている。日本公演でも聴きたかったが、残念ながらセットリストには入らなかった…

アルバム「Memory Almost Full」に収録されている。

 

   以上で曲の紹介は、終わりである。

「バラードばかり書いている」

 との誤解を受ける事もあるポールだが、実は生粋のロックンローラーなのだ。今回、取り挙げた曲を是非、一度は聴いてみて頂きたい。ポールへのイメージが一新されると思う。

 

 今回は以上。

 それではまた!